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　宮沢喜一さんが鬼籍に入られた。自民党ハト派インテリ属の親玉みたいな人だ。経済にも外交にも強く、英語が堪能（どころの話ではない）であるのに、「精神の支えは漢学の素養にある」、という。最も恐れおおい文系の天才である。

　私は、国家の舵取りはこういったインテリが担わなければならない、と考える。私が自民党の政治家を評価するのは意外であろうが、本当にそう思うのだ。宮沢喜一、加藤紘一、谷垣禎一のような、穏健で冷静なインテレクチュアルが国政を担わなくてはならないのだ。岸信介、福田赳夫、中曽根康弘、小泉純一郎、安部晋三のような感情的で過激なタカ派、国家主義者が政権運営をしてはいけない。頭がいい奴は頭が悪い奴よりもまともで整然とした理論的思考回路を持っている、と換言すれば、熱力学の第二法則に基づいて、頭がいい奴の方が頭が悪い奴よりも頭がいいわけであるから、すると、頭がいい奴は頭が悪い奴よりもまともな判断をする確率が高く、大失態をおかす危険率は少なくなるわけである。リーダーに必要なのは適切な判断力と確固たる先見性であって、情熱と郷土愛ではない。

　重ね重ね、私が自民党の政治家を評価するというのは意外であろうが、私は、本当に、宮沢喜一、その人を尊敬しているし、遠くに逝ってしまわれたことがショックである。そして、後藤田正晴と共に自民党ハト派のご意見番であった宮沢さんがいなくなったことで、より日本が“心の狭い国”になることを危惧してならない。

　知の巨人、宮沢喜一さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。（顔はETだけど）